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年間売上300万円ですが、インボイス制度に登録した方がいいですか?

(約1か月前)
Tatsuya Saitou
Tatsuya Saitou

登録した方が色々と都合が良いことは事実です。年間売上200万円でも400万円でも500万円でも状況は同じで、仕事が減ったり、報酬を減額されることも十分考えられますし、すでにそういった事態に直面している方もいるはずです。(実際、私の周りにも取引価格の交渉を持ちかけられているフリーランスがいます)

国土交通省が公開しているPDFが非常にわかりやすいのですが、インボイス制度に登録しないことで起こり得る様々な問題を端的に言うと消費税額相当分の報酬減額(取引価格の見直し)です。

つまり、これまで22万円(税込)で仕事を請けていた場合、20万円(税込)で仕事を請けなければいけない可能性が十分考えられるということです。

上記のPDFによると、こういった事例は下請法や独占禁止法に違反する可能性があるとのことですが、現実的には発注元(課税事業者)が不利になることは考えづらく、我々フリーランスは要求を受け入れる必要があるでしょう。

わかりやすく説明

インボイス制度の導入前は、年間売上1000万円以下のようなフリーランスは、免税事業者として消費税の支払いを免除されていました。そのため、消費税分をそのまま利益とすることができました。(これを益税と言います)

※以下、断りがない限り、「企業」を課税事業者、「フリーランス」を免税事業者として説明します。

一方で、消費税込みでフリーランスに報酬を支払った企業は、その消費税分を控除することができたため、端的に言うと、納付する税金を安く済ませることができました。

我々フリーランスも、税金を安くするために、経費、生命保険料控除、青色申告特別控除、配偶者控除…といった控除を利用しているわけですが、その仕組みと同じです。

しかし、インボイス制度の開始で状況は一変します。

フリーランスに支払う報酬に含まれる消費税を控除できなくなるため、企業はその消費税分「損する」ことになるからです。

そのため、企業としては「消費税分まるまる損したくない」と思うのが普通であり、それ故に、フリーランスに対してインボイスの申請を求めたり、取引価格の減額を迫ったりするわけです。

一点補足を加えると、実際にはインボイス制度開始後も猶予期間(経過措置)があり、フリーランスとの取引でも、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%を控除できます。

そのため、制度開始前後に急いで価格調整に応じる必要性はないのですが、この特例を知らない企業や、知っていながら価格調整を迫る企業も必ず出てくるため、現実問題、安心はできません。

参考リンク:インボイス制度の改正案について

どちらが得かどうか

上述の通り、インボイスの発行事業者(課税事業者)になった方が機会損失を防げることは紛れもない事実ですが、「課税事業者になって消費税分をもらえても、後でその分を自分で納税するんだから結局同じなのでは?」と思った方もいるでしょう。私もその1人です。

つまり、取引先の企業から「インボイスの申請をして課税事業者になるならこれまで通りの価格で取引しますが、免税事業者のままなら消費税分は払えないので価格調整してください」と言われた場合のことです。

この場合、誰かに外注したり、材料を購入したり、課税仕入れとなる取引(仕入れ)がないとすると、消費税額から差し引くものがないので結果は同じになります。インボイスの事業者登録をする必要性はありません。

しかし、実際問題として、免税事業者のままだと機会損失が生まれますし、一定の割合で消費税額から控除が受けられる簡易課税制度もあるため、結論としてはやはり「インボイスの発行事業者になった方が色々と都合が良いしお得」ということになります。

簡易課税制度に関しては、消費税の管理が不要、帳簿の保存が不要、仕入れがなくても控除が受けられるなどの無視できないメリットがあるため、原材料なし、広告宣伝なし、外注なしなどの利益率の高い仕事をしている方はぜひ活用すべき制度だと思います。簡易課税制度の申告方法やメリット、デメリットの解説ページ も併せてチェックしてみてください。

インボイスの申請をしなくてもいい人

基本的にすべての免税事業者がインボイスの申請をすべきだと思いますが、以下に挙げるフリーランスは発行事業者になるメリットがそこまでありません。

年間売上が少ない(200〜300万円程度)

利益に対する消費税額がそもそも多くないため、仮に価格交渉を迫られても対応可能だからです。

競合(ライバル)が少ない

競合相手が少なく、今後も安定的に受注できる見込みがあれば、取引先に消費税を負担してもらうことが可能だからです。

免税事業者との取引が中心

免税事業者の零細企業やフリーランスとの取引が中心であれば、インボイスの発行を求められることも少ないからです。

インボイスの申請に迷っている

インボイスの申請期限は2023年の3月31日までですが、これはインボイス制度開始の2023年10月1日から発行事業者として事業をしたい場合の期限です。そのため、2023年4月以降も申請は可能で、必要に迫られてからインボイスの発行事業者になっても大丈夫だからです。

会計ソフトもインボイスに対応済み

最後に、インボイス制度の登場によって、事務作業の負担増を懸念している方も多いと思いますが、業界最大手であるfreeeを初め、ほとんどの会計ソフトがインボイスに対応しているのでご安心ください。

(ちなみに、インボイス専用の請求書があるわけではなく、これまでの請求書に必要な項目を加えた形です)

関連リンク

インボイス仕事確定申告

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