個人の販売者でも特定商取引法は守らなければいけませんか?
はい、個人で何かを販売する場合でも、特定商取引法は厳守しなければいけません。つまり、実名、住所、電話番号をネットで公開するか、省略した場合でも、問い合わせがあれば、早急に開示する必要があります。
個人としてのネット活動
今や、個人としてネット上で物販やオンラインサービスを提供することは珍しくなく、個人間の取引も以前に増して多くなりましたが、リスクなしで自由に何でも売れるわけではなく、守らなければいけないルールもいくつか存在します。その良い例が特定商取引法です。
特定商取引法とは?
特定商取引法は、消費者の利益を守ることを目的とした法律です。オンラインでの販売もこの法律の対象となり、商品やサービスを販売する際には、特定の情報の公開が義務づけられています。具体的には、販売者の名前、住所、電話番号などの基本情報をネットで公開するか、または開示要請があった際に速やかにこれを提供する必要があります。
実名公開の背景
このような要件が設けられている背景には、消費者の安心感の確保や、取引に関するトラブルが生じた場合の連絡手段の確保が挙げられます。オンライン上での取引は、物理的な距離や匿名性が介在するため、信頼性を確保する要素が求められるのです。
匿名でサービスを販売するには
しかし、以下に挙げる専門機関によると、個人情報を公開しなくて良いケースも中にはあるそうです。
- 産業部消費経済課(048-600-0405)
- 日本産業協会(03-3256-3344)
ただ、担当者によって解釈が変わったり、法整備によって根本が変わる場合も考えられるため、やはり、個人であっても特定商取引法を厳守するのが理想です。
具体例
結論、販売条件をあえて明示しないこと、メールやSNSなどを用いて個人的な取引を主体とすること、が前提であれば公開を避けることが許されるとのこと。取引が非公開の範疇で行われると解釈されるため、特定商取引法の該当範囲外となるためです。
当初、購入ボタンを設置せずに商品やサービスの案内だけするページを作り、後で個別に取引の詳細を決定するのはどうか?と聞いてみましたが、それは無理なようです。
理由は、特定商取引法、第3節の通信販売の第11条にあり、この条文によると、商品やサービスの販売条件に関する情報を公表する場合、特定商取引法に基づく表示が必須となります。この「公表」とは、新聞の広告やダイレクトメール、ブログの紹介記事なども含まれます。
しかし、商品のイメージを中心とした広告、例えばバナー広告やテレビCMはこの範囲外とのことで、つまり、商品の特徴だけをフワッと紹介し、具体的な取引に関する情報を後から個別に伝える場合はセーフという理屈です。
この場合の注意点として、第13条には前払いでの取引に関する特定の要件があり、これに従わなければなりません。具体的には、サービス提供前に代金を受け取る場合、提供者の情報を表示する必要があると記載されています。そのため、後払いを選択するしかありません。条件的には必然的に匿名利用可のPayPayを使うしかないでしょう。
現実的な販売方法
前述の通り、名前も住所も電話番号も、全ての情報を隠しながらネット上でサービスを販売するのは現実的ではありません。
現実的には、プライバシーと切り離した適切な情報を用意することがベストな選択肢と言えます。
具体的には、バーチャルオフィスを利用することで居住地を、IP電話(050~)を利用することでプライベートの連絡先を、それぞれ公開する必要がなくなります。
バーチャルオフィスは月額5,000円以下の格安なものがありますし、IP電話に関しては100円程度で利用できるものもあります。特定商取引法を遵守する必要経費としては格安と言えるでしょう。
名前に関しては、公開する義務がありますが、よほど特殊な名前を除き、公開しても問題ないと思います。
販売者の定義とは?
ネット上には、「個人事業主でなければ問題ない」や「利益が少ない場合はセーフ」といった情報が散見されますが、基本的な考え方として、「何かを提供して利益を得る」という明確な意図がある場合、販売業者とみなされます。
金額の大小は関係あるのか?
特定商取引法が対象とする範囲は非常に広く、ほとんど「全て」の取引がこの法律の対象となります。
具体的な例を挙げると、日常の出来事を綴ったブログにアクセスするためのパスワードを100円で提供する場合も、特定商取引法の対象になります。
また、会員制のサイトも同様です。料金が月額100円であろうと、月額980円であろうと、サービス提供としての役務が存在するため、特定商取引法に従った対応が必要です。
まとめ
- 個人が何かをネット上で販売する場合、特定商取引法を厳守する必要がある。これには、実名や住所、電話番号などの基本情報を公開するか、またはその情報の提供要請があった際に迅速に応じることが含まれる。
- 特定商取引法は、消費者を保護するための法律であり、オンライン取引もその対象となる。
- ネット上の一部情報によると、一定の条件下で個人情報を公開しない方法もあるとされているが、法の解釈や担当者によって異なるため、法律を遵守することが最も確実。
- 「何かを提供して利益を得る」という意図がある場合、その活動は販売業者として扱われる。
- 特定商取引法の対象は非常に広く、取引の内容や金額に関わらず、ほとんどのオンライン取引が該当する。